最高裁判所第一小法廷 昭和26(オ)274 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告人A1訴訟代理人弁護士斎藤忠雄及び上告人A2訴訟代理人弁護士渡辺七郎
の上告理由について。
原審の確定した事実によれば、被上告人は昭和九年一二月一日上告人等に本件係
争家屋を賃貸したが昭和二一年五月中右賃貸借を同月末日限り解約することの合意
が当事者間に成立しその明渡は昭和二三年一〇月三一日まで猶予せられたというの
である。原審は右の事実関係に基き被上告人は上告人等に対し係争家屋の明渡請求
権あるものとし、これが明渡を求める本訴請求を権利の濫用であると主張する上告
人等の抗弁につき、仮に上告人等の主張するように前示明渡猶予期間経過後上告人
等においてその義務の履行を遅怠している間に他に移転すべき住宅店舖を求めるこ
とが至難に陥つたとしても、被上告人において何等の必要もなく本件家屋の明渡を
訴求するものであるとの上告人等主張の事情が立証されない本件にあつては、被上
告人に権利の濫用ありとなすことはできない旨判示しているのである。この原判旨
は首肯することができる。けだし権利の濫用とは、権利の行使が義務者に対し損害
を加える目的のみでなされるというような著しく信義誠実の原則にもとり公序良俗
に反する場合をいうのであつて、原審の確定した事実関係によれば被上告人の本件
権利の行使がかくの如き場合に該当しないこと勿論だからである。論旨は違憲をい
うけれども、その実質は原審の認定に副わない事実を前提として単なる法令違反を
いうに帰着し、上告適法の理由に該当しない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり
判決する。
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最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 真 野 毅
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
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